ブラック・サバス(Black Sabbath)は、イングランド出身のロック・バンド。
幾度もの変遷を経ながらも約50年に渡って活動し、「レッド・ツェッペリン」「ディープ・パープル」と並ぶ、三大ハードロック・バンドに数えられる。また、ヘヴィメタルの源流となる始祖的グループとしても知られる。
2000年・2014年『グラミー賞』受賞。2006年『ロックの殿堂』入り。ローリング・ストーン誌選出「歴史上最も偉大な100組のアーティスト」第85位。
来歴
オジー・オズボーン在籍期 (1968年 - 1979年)
1968年にバーミンガムで結成。ボーカリストのオジー・オズボーンが、新聞に新バンド結成のためのメンバー募集の公告を出した事が契機だった。
バンド名は当初「Earth」と名乗っていたが、ベーシストのギーザー・バトラーが、1964年に公開されたマリオ・バーヴァのホラー映画『BLACK SABBATH』(邦題『ブラック・サバス/恐怖!三つの顔』)から取って改名した。その映画の公開時、映画館には長蛇の列が出来ていたことから、「人間は恐怖を求める」という着想を得た、と本人は語っている。
デビューアルバム『Black Sabbath』(邦題『黒い安息日』)は、1970年2月の"13日の金曜日"という曰くつきの日付にリリースされた。
同年リリースの2ndアルバム『パラノイド』からシングルカットしたタイトルナンバー「Paranoid」がスマッシュヒット。同アルバムも全英アルバムチャート1位を獲得する。その後、1975年発表の6thアルバム『サボタージュ』まで、全英・全米ともにアルバムチャート上位にランクイン。特に5thアルバム『血まみれの安息日』までの作品が、いずれも全米で100万枚以上の売り上げを記録した。
1976年、この時期から新たな音楽の波「パンク/ニューウェーブ」のムーブメントが到来し、既存のロック・ミュージックは徐々に終息していく。それは当バンドも例外ではなく方向性の相違もあり、メンバー間にも不協和音が漂い始める。特にオジーが重度のアルコール問題を抱えていた。
1977年、遂にオジーを解雇。しかし後釜を据えても上手くいかず、翌年に呼び戻されて復帰する。しかし制作した8thアルバム『ネヴァー・セイ・ダイ』が酷評されて芳しくなかった。そして結局アルコール問題が改善されなかったオジーは、再度解雇される。
トニー・アイオミ主導期 (1979年 - 1996年)
1979年、オジーの後任として「レインボー」を脱退したばかりのロニー・ジェイムス・ディオが加入。そのレインボーのサウンドと融合し、新たな様式美スタイルを展開した9thアルバム『ヘヴン&ヘル』を翌年に発表。業界からも高い評価を受ける。
1980年、オリジナルドラマー ビル・ワードが脱退。その後ワードは、短期の復帰を繰り返している。
1982年、ロニーがリーダーバンド『ディオ』結成に向けて脱退。後任に元ディープ・パープルのイアン・ギランが加入するが、こちらもディープ・パープル再結成参加のため、1984年に脱退。その煽りを食らい、活動が頓挫してしまう。
1985年、この年に世界規模の大型チャリティー・コンサート『ライヴエイド』が開催。バンドはオリジナルメンバーによる、一度きりのラインナップ復活として参加。
オリジナルメンバー ギーザー・バトラーが脱退。トニー・アイオミは、これを機にバンドを解消し、ソロ・アルバムの制作に着手する。翌年にレーベルからの強い要請により、完成したアルバム『セヴンス・スター』をブラック・サバス名義でリリース。ゲストに招いていたグレン・ヒューズ等が、そのままツアーのバンドメンバーとなった。
1987年以降はロニー時代の様式美スタイル回帰を狙い、同タイプのボーカリスト トニー・マーティンやレインボー人脈のコージー・パウエル(Ds)を起用する。そして1992年、コージー等と入れ替わりに、その本家ロニー・ジェイムス・ディオが復帰するも、アルバムの1枚の短命に終わる。
1993年、トニー・マーティンが復帰。1994年にはコージーも復帰し活動を継続するが、その後オジー・オズボーンを含んだオリジナル・ラインナップの復活が企図される。
リユニオン期 (1997年 - 現在)
1997年、正式にオリジナルメンバーの再結成を果たす。以降 当ラインナップ以外でブラック・サバスとは名乗らないと宣言。数年間ツアー活動を行いライブ・アルバムをリリースしたが、新しいスタジオ・アルバムは制作しなかった。
2000年、楽曲「Iron Man」で『グラミー賞』受賞。2006年『ロックの殿堂』入り。この年でリユニオン体制の活動が停止。
2007年、トニー・アイオミ側が、10thアルバム『悪魔の掟』時代のメンバー編成(ロニー・ディオ、ヴィニー・アピス、ギーザー・バトラー、トニー・アイオミ)でツアーを行うと発表。ブラック・サバスとして事実上の変名「ヘヴン・アンド・ヘル」名義で活動する。
2010年、ロニーが他界し、ヘヴン・アンド・ヘルの活動が停止。
2011年11月11日11時11分、オジー・オズボーン、トニー・アイオミ、ギーザー・バトラー、ビル・ワードは、オリジナル・ラインナップの再始動を会見で発表した。しかし後に、ビル・ワードが契約の内容に不満を持ち、再結成に参加しないと表明する。今後のライブや創作は、代役を迎えての活動に移行。
2013年、18年ぶりの19thアルバム『13』をリリース。デビューから43年目にして、初めて全米ビルボードチャート1位を獲得。各国でも軒並み1位ないし上位にランクインした。
2014年、楽曲「God Is Dead?」で『グラミー賞』受賞。
2016年、バンドの最後となるワールドツアー「THE END」を開始。
2017年2月、バンド発祥の地・バーミンガムで最後を飾るラストライブを開催。約50年に渡る活動の幕を閉じる。後日にトニー・アイオミは、将来復活する可能性に含みを残した。
影響
- ヘヴィメタルのルーツ
- ジャズやブルースを基調とし、「人を怖がらせる音楽を作る」というコンセプトで作られた音楽性は、ヘヴィメタルを形成していく要素の一つとして後続に大きな影響を与えた。その怪奇的なイメージで度々黒魔術や悪魔と結び付けられ、ギタリストのトニー・アイオミがアメリカ・ツアーの最中、狂信者に楽屋で刃物を突きつけられたという危険なエピソードもある。
- 結成当初からメンバー内の交流も公私共に良好で、ビル・ワードのエッセイ・『若き安息日』には「女風呂を必死にのぞこうとするトニー。その尻を持ち上げるオジー。それを心配そうに見守るギーザー。あの瞬間、俺達は初めてのセッションをした」との記述も残されている。
- 影響力
- ブラック・サバスはその革新的な音楽により後続に大きな影響を与えた。アメリカではオジー・オズボーンのソロでの成功や、レインボーで知名度のあったロニー・ジェイムス・ディオの加入で多大な人気が今でもあり、HR/HMの歴史上最も重要なアーティストを決める投票でレッド・ツェッペリンに次いで2位に入ったこともあるほどである。
- その影響力は、直系のハードロックやヘヴィメタルに留まらず、ブラック・フラッグなどのハードコア・パンクやニルヴァーナなどのグランジ、ブラックメタルやドゥームメタル(ストーナーロックやスラッジメタルも含む)といったジャンルにおいても、その源流として扱われることが多い。
- 当のオジー・オズボーンは、ヘヴィメタルを生み出したのは自分達ではなく、「キンクス」「レッド・ツェッペリン」「ザ・フー」等から影響を受けて派生した経緯があると否定している。ただし「ヘヴィ(悪魔)なギターのリフを作り出した、トニー・アイオミだけは別格」と釘を刺している。
メンバー
オリジナル・ラインナップ
- オジー・オズボーン Ozzy Osbourne - ボーカル (1968年-1977年, 1978年-1979年, 1985年, 1997年-2017年)
- トニー・アイオミ Tony Iommi - ギター (1968年- )
- ギーザー・バトラー Geezer Butler - ベース (1968年-1985年, 1990年-1994年, 1997年-2017年)
- ビル・ワード Bill Ward - ドラムス (1968年-1980年, 1982年-1983年, 1985年, 1997年-2012年)
-
オジー・オズボーン(Vo) 2017年
-
トニー・アイオミ(G) 2012年
-
ギーザー・バトラー(B) 2013年
-
ビル・ワード(Ds) 1999年
ライヴ・サポート
- トミー・クルフェトス Tommy Clufetos - ドラムス (2012年-2017年)
- アダム・ウェイクマン Adam Wakeman - キーボード (2004年-2006年, 2012年-2017年)
旧メンバー
- ボーカル
- デイヴ・ウォーカー Dave Walker (1977年)
- ロニー・ジェイムズ・ディオ Ronnie James Dio (1979年-1982年, 1991年-1992年, 2006年) R.I.P.2010
- イアン・ギラン Ian Gillan (1982年-1984年)
- ロン・キール Ron Keel (1984年)
- デイヴィッド・ドナート David Donato (1984年-1985年)
- グレン・ヒューズ Glenn Hughes (1985年-1986年)
- レイ・ギラン Ray Gillen (1986年-1987年) R.I.P.1993
- トニー・マーティン Tony Martin (1987年-1991年, 1993年-1997年)
- ロブ・ハルフォード Rob Halford(1992年)
- ベース
- デイヴ・スピッツ Dave Spitz (1985年-1986年, 1987年)
- ボブ・デイズリー Bob Daisley (1986年)
- ジョー・バート Jo Burt (1987年)
- ローレンス・コットル Laurence Cottle (1988年-1989年)
- ニール・マーレイ Neil Murray (1989年-1991年, 1994年-1995年)
- ドラムス
- ヴィニー・アピス Vinny Appice (1980年-1982年, 1991年-1992年, 1998年, 2006年)
- ベヴ・ベヴァン Bev Bevan (1983年-1984年, 1987年)
- エリック・シンガー Eric Singer (1985年-1987年)
- テリー・チャイムズ Terry Chimes (1987年)
- コージー・パウエル Cozy Powell (1988年-1991年, 1994年-1995年) R.I.P.1998
- ボビー・ロンディネリ Bobby Rondinelli (1993年-1994年, 1995年)
- キーボード
- ジェフ・ニコルズ Geoff Nicholls (1980年-2004年) R.I.P.2017
時系列

ディスコグラフィー
スタジオ・アルバム
- 1970年
- 黒い安息日 Black Sabbath
- パラノイド Paranoid
- 1971年 - マスター・オブ・リアリティ Master of Reality
- 1972年 - ブラック・サバス4 Black Sabbath Vol.4
- 1973年 - 血まみれの安息日 Sabbath Bloody Sabbath
- 1975年 - サボタージュ Sabotage
- 1976年 - テクニカル・エクスタシー Technical Ecstasy
- 1978年 - ネヴァー・セイ・ダイ Never Say Die!
- 1980年 - ヘヴン&ヘル Heaven and Hell
- 1981年 - 悪魔の掟 Mob Rules
- 1983年 - 悪魔の落とし子 Born Again
- 1986年 - セヴンス・スター Seventh Star(BLACK SABBATH featuring TONY IOMMI名義)
- 1987年 - エターナル・アイドル The Eternal Idol
- 1989年 - ヘッドレス・クロス Headless Cross
- 1990年 - ティール Tyr
- 1992年 - ディヒューマナイザー Dehumanizer
- 1994年 - クロス・パーパシス Cross Purposes
- 1995年 - フォービドゥン Forbidden
- 2013年 - 13 13
ライヴ・アルバム
- 1980年 - ライヴ・アット・ラスト! Live at Last
- 1982年 - ライヴ・イーヴル Live Evil
- 1995年 - クロス・パーパシス・ライヴ Cross Purposes Live
- 1998年 - リユニオン Reunion
- 2002年 - パスト・ライヴス Past Lives
- 2007年 - ライヴ・アット・ハマースミス・オデオン Live at Hammersmith Odeon
コンピレーション・アルバム
- 1975年 - ウィ・ソールド・アワ・ソウル・フォー・ロックンロール We Sold Our Soul for Rock 'n' Roll(ベスト盤。2枚組)
- 1989年 - ブラッケスト・サバス~スーパー・ベスト
- 1991年 - グレイテスト・ヒッツ
- 1991年 - オジー・オズボーン・イヤーズ The Ozzy Osbourne Years
- 1992年 - The Collection
- 1994年 - レジェンダリィ The Sabbath Collection
- 1995年 - ザ・ベスト・オブ・オジー・オズボーン・イヤーズ
- 1996年 - ザ・サバス・ストーンズ The Sabbath Stones
- 1996年 - オジー・オズボーン・ベスト・トラックス
- 1996年 - ベスト・トラックス~ビトゥイーン・ヘヴン・アンド・ヘル 1970-1983
- 1996年 - ベスト・オブ・ブラック・サバス 1970~1987<完全版>
- 1998年 - アンダー・ホイールズ・オブ・コンフュージョン 1970~1987 - Under Wheels of Confusion
- 2000年 - ベスト・オブ・ブラック・サバス The Best of Black Sabbath
- 2002年 - Symptom of the Universe: The Original Black Sabbath 1970–1978
- 2004年 - ブラック・ボックス Black Box: The Complete Original Black Sabbath(オズボーン在籍時のアルバムを収めたボックス)
- 2006年 - Greatest Hits 1970–1978
- 2007年 - ベスト・オブ・ディオ・イヤーズ - Black Sabbath: The Dio Years
- 2008年 - The Rules of Hell(ディオ在籍時のアルバムを収めたボックス)
- 2009年 - グレイテスト・ヒッツ - Greatest Hits
- 2012年 - アイアン・マン - ザ・ベスト・オブ・ブラック・サバス Iron Man: The Best of Black Sabbath
来日公演
- 1980年
- 1989年
- 1994年
- 1995年
- 2013年 OZZFEST 2013